カメカミ幸福論
「ムツミ、何何~?」
「・・・うちの親よ。今日は実家に帰らなきゃならないわ。ああ、折角の休日が~」
「実家?ムツミの両親がいる家か?」
そう、私は簡単にそう答えて携帯電話をベッドにむけて放り投げる。もう、私の素晴らしい休日が~・・・。
「行きたくないのか?」
「そりゃ行きたくないわよ~・・・。おじいちゃんには会いたいけど、行ったら独身で稼ぎも悪いことを親戚中にねちっこく言われるのが判ってるもの~」
ただし、婚約者とデートなら、行かなくてもいい。・・・・・そんなお芝居に付き合ってくれそうな男が残念ながら周囲にはいないのだけれど。
だって今周囲にいる男(まあ、一応ね)と言えば――――――――
私は光り輝く美男子である神をじっと見た。
・・・イケメンで、その点文句なし。この美しい外見の男を連れて行ったら、母親なんか卒倒しそうだ。この目立つブロンドを黒染めして短くし、それからスーツかなんか着せたらほら、簡単に美形のサラリーマンの出来上がり。婚約者として紹介し、それから破談になったわって言えば・・・。
いやいや、私はそこで首を振る。
「無理でしょ、無理無理」
「どうしたムツミ?」
「いや、何でも」
だめだわー、ダンは無理だわ。そんな演技をしてくれるとは思えない。