素顔のキスは残業後に
窓から射し込む夕日は重い影を含ませて、冬の訪れを感じさせる。
それもそのはず。だってあと3週間で12月。
愛し合う恋人達が馬鹿みたいに浮かれて小躍りするそんな季節だ。
嫉ましさ全開な自分に、ため息をつきたくなる。
印刷会社の打ち合わせも無事に終わり、五月さんと帰りの電車に揺られていた。
帰宅時の混雑に巻き込まれた着ぶくれラッシュの車内。
隣で吊り皮を握り締める五月さんに、ずっと気になっていたことを聞いてみた。
「あの、五月さん。柏原さんの弟さんって海外で生活されてるんですよね?」
「えっ。いまは戻って来てるけど」
「そう…なんですか。でも柏原さんも、弟さんと海外で生活して時期があるとか?」
「いや、ないけどなぁ」