素顔のキスは残業後に
難しく考える必要なんてないのに。

扉が開かれたことに、心底ホッと胸を撫で下ろしている自分が、やっぱりよく分からない。



「ぼけっとしてると、閉まるぞ」


急かすような声に慌てて扉に駆け寄った。




柏原さんの部屋はマンションの5階にあった。

玄関先に出て来た彼は首周りがV字にカットされた茶系のセーターに、ゆったりとした黒のパンツを履いていた。


いつもより青白く見える顔。寝起きっぽく軽く跳ね上がった髪。


寝ていたのが分かる姿に胸が締めつけられて、気が付いたらこんなことを口にしていた。
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