素顔のキスは残業後に




宣伝部があるフロアーには普段使われていない備品室があるらしい。


廊下の中央にあるエレベーターを通り過ぎて奥に進む。

扉は閉まりが悪くて少しだけ開かれていて、扉に手を掛けて室内に足を進める。


少し埃臭いその部屋には窓が一つだけある。
それは3分の1ほど開かれていて、彼は窓枠に肩肘をついて体を預けていた。


横から吹きつける強いビル風が彼の髪を揺らす。

乾燥した12月の空を仰いでいた瞳が、静かに歩みを進める私に気付いてこちらに向けられた。

驚いたように丸くなった瞳。それはすぐに不機嫌そうに細くなる。


「サボりか」



< 165 / 452 >

この作品をシェア

pagetop