素顔のキスは残業後に
宣伝部があるフロアーには普段使われていない備品室があるらしい。
廊下の中央にあるエレベーターを通り過ぎて奥に進む。
扉は閉まりが悪くて少しだけ開かれていて、扉に手を掛けて室内に足を進める。
少し埃臭いその部屋には窓が一つだけある。
それは3分の1ほど開かれていて、彼は窓枠に肩肘をついて体を預けていた。
横から吹きつける強いビル風が彼の髪を揺らす。
乾燥した12月の空を仰いでいた瞳が、静かに歩みを進める私に気付いてこちらに向けられた。
驚いたように丸くなった瞳。それはすぐに不機嫌そうに細くなる。
「サボりか」