素顔のキスは残業後に
「リーダーに言われたくないです」


「なんで、ここが分かった?」


「ここは宣伝部社員のサボりスポットだって。由梨さんに聞きました」


さっきのやり取りが気になっているのか、

柏原さんは不機嫌全開とばかりに眉間に皺を深く刻み、そのまま何か考え込むように黙り込む。


うわぁ。ご機嫌斜めだし。


そんな彼を横目に、どうしようと迷ったけれど、
ポケットから取り出した物をおずおずと差し出した。



「なに、これ?」


「見ての通り温泉饅頭です。15時のおやつだって宣伝部で配ってました。これは柏原さんの分ですよ」



私の掌には由梨さんが配っていた温泉饅頭が二つ。

何やら真剣な眼差しが温泉饅頭に注がれて、呟くように彼は言った。


「これ、こしあん?」


「こしあん、でしたよ」
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