素顔のキスは残業後に
そんな私に軽く舌打ちをした柏原さんは、私の掌からお饅頭を奪い取る。

それをスーツのポケットに無造作に放り込むと、至近距離に近付いた瞳に挑発的な色が挿し込んで、
歩み寄った彼に耳元でそっと囁かれた。


「食ったの?」



掠れた声を漏らした唇が私の頬を横切る。

耳朶にふわりと触れた柔らかい感触に、ぞわりと背筋が粟立つ。

声にならない声が漏れそうになると、



「――っ…」


耳朶から離れた彼の唇がその吐息ごと奪い去っていく。
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