素顔のキスは残業後に
ためらう気持ちごと息を吐き出す。

由梨さんがワイングラスをテーブルに置くのを待ってから、声にした。


「由梨さん、間違ってたらすみません。
もしかして……他に好きな人がいるんじゃないですか?」


私の問いかけに由梨さんは一瞬頬を強張らせる。

それが答えだと思った。


私を見つめる瞳が揺れ動く。

声にならない想いに駆られたような迷いのある瞳。


一度視線をテーブルに落とした由梨さんは

小さく息を吐き出してから、意を決したように口を開いた。
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