素顔のキスは残業後に
五月さんはそう言って「にひひっ」と唇を引き上げて笑う。

五月さんには相談に乗って貰っていたし。
彼女にだけは柏原さんとのことを少し前に報告していた。


食堂で雄叫びをあげた五月さんの喜びようを思い出す。


『きゃー、今世紀最大のオメデタがキター!』


半径10m内にいたすべての人を振り返らせる彼女の悲鳴に、

少し離れたところにいた柏原さんは心底うっとおしいって顔をしてたけど。

誰かに喜んで貰えることは素直に嬉しかった。


そんなことをぼんやり思い出していた脳裏に、あの日由梨さんが見せた弱々しい笑顔が浮かんだ。


『他に好きな人って――。

やだっ、そんな人いないわよ。それより友花ちゃんと柏原君の話を聞きたいな』

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