素顔のキスは残業後に
儚げな由梨さんの笑顔が、暗いまぶたの裏に浮かび上がった。


由梨さんの好きな人、柏原さんだったんだ。

ふたりは付き合ってたことがあって。

彼が指輪を渡そうとした彼女も、

きっと――……



ただ呆然と息を呑むことしかできない。

鼓動の響きをやけに煩く感じる。

体にあるすべての感覚が失われていく。


固く閉じたまぶたの裏に蘇るのは――

柏原さんの過去を話す五月さんの声だった。

< 250 / 452 >

この作品をシェア

pagetop