素顔のキスは残業後に
「俺は――…」
喉から絞り出すようなその低い声も――…
私はよく知っている。
鈍い痛みを放つこめかみを指で押さえつけた。
鼓動を震わせることしか出来ない私に、胸を突く事実が彼女の声で続けられた。
「後悔してるの。あの日、待ち合わせ場所にも行かずに逃げたこと。
ずっとっ……後悔してた。
だからあの日受け取れなかった柊司の想いが、まだ少しでもあるなら、やり直したいの」
知りたくなかった事実から、逃れるようにまぶたを閉じる。