素顔のキスは残業後に
もう何度目かの沈黙が流れる。

由梨さんは迷いを断ち切るように息を吐いてから、話を続けた。


「仕事のこと、年齢のこと、結婚のことが頭に浮かんだわ。だけど気付いてしまった想いを止めることはできなかった。

先に想いを告げたのは彼だったけど、過ごす時間が増えるほど彼への想いが募っていった。


でも、不安は尽きなかったの。

彼にはもっと年の近い……相応しい人がいるんじゃないかって、いつも思ってた。


いまはいいかもしれない。だけど、3年先、5年先――

もし彼の気持ちが変わってしまったら、そのとき私には何が残るんだろうって。


幸せだったのに、幸せ……だったから、
不安で不安で仕方がなかった。


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