素顔のキスは残業後に
そんな私の想いに柏原君は気付いてくれた。

隠れて付き合う必要ないって。自分の我がままかもしれないけど、そうしたいって。


気持ちが変わらない約束の証を渡したいって――……

言ってくれた。

嬉しかった。これ以上の幸せはないと思った。
だから、それでもう充分だと思ってしまったの。

別れようって、私から彼に言ったわ」



由梨さんは想いのすべてを吐き出すように

そこで長く息をついた。


テーブルから微かに伝わる指先の震え。

彼女は隠すように指先を絡め合わせる。


短い沈黙が永遠のように長く感じる。
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