素顔のキスは残業後に
「結局、私は彼と過ごした時間より、

会社での立場や、世間体、まだ見えない未来を優先した。

もしかしたらそうすることで、年上のプライドを保つ気持ちもあったのかもしれない。ずるいのよ、私」


それまでテーブルに落ちていた由梨さんの目線が

ゆっくりと引き上がる。


深い悲しみに満ちた瞳に胸が押し潰されそうになって、いま彼女に言われた言葉を思い返す。



年の差カップル。

それはテレビの芸能ニュースでも時々取り上げられていて、世間でも珍しいものではないと思う。


だけど、こうして話を聞くよりもずっと――

当事者にしか分からない想いがあるのだと思う。
< 269 / 452 >

この作品をシェア

pagetop