素顔のキスは残業後に
そう思うのに、堰をきったように想いが溢れそうになる。

誰もいない廊下でひとり天井を見上げた。



「私じゃ…なかったのかなぁ」


ぼんやりと呟くと頭の中で別の声が響く。


『弱ってる桜井に付け込むことしてるんじゃないかって。でも……違ったんだろ?』


照れくさそうな瞳にどうしようもなく想いが溢れて、声にならなかったことを思い出す。


初めて触れた指先。何度も重ね合った唇。向けられる笑顔も――……

彼のすべてを手に入れたいと思っていた。
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