素顔のキスは残業後に
キーボードを打つ彼の手が止まる。

雅人の顔が斜めに引き上がったのは、帰ることを告げた私がその場に立ち尽くしていたからだ。


「ん? どうした」


いま総務部のフロアーには雅人と私しかいない。

柏原さんと過ごした時間に想いを馳せていたら

雅人に聞いてみたくなった。


私が考えても出せそうにない答え。

雅人はきっと知っているから――……


「前に言ってくれたよね。私に幸せになってほしいって。あれ、どういう意味なのかなって」


「えっ?」

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