素顔のキスは残業後に
溢れ出す感情を堪えるように

強い力で押さえつける。


雅人と彼女を取り囲む人だかりを見つめていると、ぼやけていく視界の隅で私を見つめる雅人に気付いた。


大丈夫か? 


今日の主役にそんな気遣うような瞳をさせてる私は、いまどんな顔をしてるんだろう。


でも瞼の裏を熱くさせる想いは――…

雅人が思ってるようなことじゃないから。


だから今日の雅人に負けないくらいの笑顔を返す。

口角を引き上げて、めいいっぱい瞳を細めた。


自分ではない他の誰かの幸せを願うこと。

私がそう聞いたら、『やり残したことがある』

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