素顔のキスは残業後に
『いまは桜井とこうしたいって思った』


突然届けられた想いに戸惑いもあった。


でも、あのとき私は――……

出会ってからの時間だとか、始まりの言葉だとか、


そんなことはどうでもよくて、ただ強く願った。

この時間が長く続いてほしいと。

何かに突き動かされるように、それだけを願っていた。


鼓膜から響き伝わる彼の声は、

深手を負った胸に優しい色を添える。


無性に泣き出したい衝動に駆られて、微かに震え出す唇を両手で押さえつける。
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