素顔のキスは残業後に
ユカちゃんは顔を引きあげてブーケを私に差し出す。

白とピンクのバラで作られたブーケは、

彼女が着ているピンク地のドレスにとても似合っているのに、

さっきだってあんなに欲しがっていたのに、


いまだってその気持ちは変わらないと思うのに。


きっと彼女はすごく純粋で、心がやさしい女の子なんだと思った。


早く受け取ってというように強い視線を向けるユカちゃんに、ゆっくり首を横に振る。


「いいの。それはユカちゃんに持っててほしいんだ」


「えー。でもっ……」


涙を手の甲で拭って、ユカちゃんに笑顔を向けた。

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