素顔のキスは残業後に




披露宴会場にいるすべての人の視線は主役の二人に向けられている。

声も漏らさず涙を流す私に気付く人はいないと思っていたけど、



「悲しいの?」


耳に届いた幼い声が、遠くにある意識を引き戻してくれた。

低い所から聞こえた声に視線を下ろす。


「これ、やっぱりお姉ちゃんに返すね」


心配げな瞳で私を見つめていたのは、ついさっきブーケを譲ったユカちゃんだった。
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