素顔のキスは残業後に
だけど傷つくことを恐れて自分の気持ちに蓋をしたり、

相手の反応を窺いながらでしか動けなくなったり、

何も知らなかった子供の頃より弱くなってしまう瞬間があるのだと思う。



雅人の言葉を思い出す。


『桜井に踏みこんで聞けなかったのは、自分の懐の浅さを認めるのが悔しかったんだな、きっと。

つまらない男なんだよ、俺』


別れを告げられたときも、

僅かな望みにすがるより雅人の言葉にこれ以上傷つくのを恐れてしまった。


大好きだったのに――……

私はいつも傷つく前の予防線を張り巡らせてばかりだった。

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