素顔のキスは残業後に
顎をしゃくりながらの部長の声に、美香ちゃんの肩が震える。

空になったワイングラスを掲げたのは部長で、たったいま声掛けをした式場の女性も困惑した笑みを浮かべた。



「部長。そろそろお時間ですので」


すっかり酔いがまわった赤ら顔の部長とその女性の間に、

課長が慌てて入るのを横目に見ながらついため息が零れる。


まったく。お酒弱いのにあんなに飲むからだよ。

でも部長がこうなってしまうと普段以上にタチが悪い。

この場は課長に任せて退散した方が良さそう。


みんな表情を曇らせて成り行きを見守っていたから、

このあと大事な予定を控えている美香ちゃんの肩をそっと叩いた。


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