素顔のキスは残業後に
早くこの場を離れた方がいい。

そんな心の声を感じ取ってくれた美香ちゃんがテーブルを離れようとすると、


「おい! まだ帰っていいなんて言ってないぞ」


高圧的な怒声が美香ちゃんの足を震わせた。



「まったく最近の若いもんはこれだからぁ、ダメなんだ。俺の若い頃はなぁー……」


タチの悪いおじさんの常套句をつらつら並べ出す部長の瞳は、焦点が定まっていないように見えた。


まだ会場に残っている人達の視線を感じる。

恥ずかしさと情けさと怒り。

言葉にならない想いが胸の奥から込み上げてくる。


雅人に申し訳ない気持ちでいっぱいになるけど、弾けそうになる感情をグッと堪えた。
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