素顔のキスは残業後に
柏原さんはそういう人だから。

いつだって周りを気遣って動いてくれるところも彼らしくて、自然と頬が緩んでしまう。


彼の気持ちを完全に見透かして得意げな私に、柏原さんから「あぁ」なんて気の抜けた声が漏れる。

私を見つめる黒い瞳が宙を泳いで、一度視線を外してから戻される。


トクンッと胸が微かに震えたのは――……


引き寄せられるような温かい眼差しが、私をまっすぐ見つめていたから。


穏やかな沈黙が流れる。

柏原さんの指先が私の髪にそっと触れて、不意打ちの言葉が鼓膜まで響いた。
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