素顔のキスは残業後に
小指の古傷に視線を落とす。

感情をコントロールできずに、ただ泣き叫ぶことしかできなかった自分を思い出す。

もっとうまくやりたい。色々なことを――…


熱を持ったまぶたを固く閉じる。
それを開かせたのは訪問者を知らせるインターホンの音だった。


休日の予定外の訪問者なんて、新聞の勧誘か怪しいセールスに決まってる。

そのまま無視を決め込んでいたのに何度もしつこく鳴り続ける。
仕方なしに重い体をベッドから起こした。


留守番してるだけなんですって言って、断ろう。はぁっとため息を吐き出す。


「宅急便です」


扉の外から漏れ聞こえる声。チェーンをかけた状態でドアを開くと、


「まだ寝てたのかよ。ダメ女の典型だな」

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