素顔のキスは残業後に
「まずは、穴子からな。確実に食通じゃない桜井は知らないだろうけど、刺身にしてもけっこう美味いから」


柏原 柊司はそんな失礼な言葉を添えながら、
私と私のペットの窮地を救ってくれるべく私から包丁を取り上げた。

(今日は仕事じゃないし。なんかものすごい意地悪モードだから、こっそりフルネーム呼びにしてやるんだから!)


そんなささやかすぎる抵抗に気付かない彼は、まずは穴子のぬめりを慣れた手つきで取り除く。
そして骨にそって身を切り分けていった。


「じゃぁ、次はカニ。棘とかあったりするからビニール手袋して。まずは前掛けって、ここな。腹んとこ取ってだな」


無知と確定された私に解説まで付けながら、流れるような指さばきでカニも解体されていく。

(カニは出来ますけどね。もうこの際だ。流れでやって貰っちゃおう)



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