素顔のキスは残業後に
急なお腹は止められないって? 

でも、もうちょっとタイミング考えようよ。ものすごくいまさらだけど、お腹に力をこめてみる。

すると今度はキュルゥーと悲しげな悲鳴に変わった。


なんか、ね。なんか、もうね。
なんかなんか、もうね。消えてしまいたいですよ。


ぶはっと吹き出す彼を横目に見る。なす術なく俯いた私の頭がポンッと軽く叩かれた。


「桜井のペットが餓死する前に、さくっとやるか」


あれから10分で急いで着替えて、見られる程度の化粧をしてから彼を部屋に入れた。

料理はそれなりにできるけど小難しい料理は得意じゃない。


だから近所の魚屋で貰ったという穴子を「これは刺身用にさくっとな」と差し出されたところで、

ぬるっとしたソレのどこから手をつけていいのかすら分からない。

(だって穴子なんて、蒲焼か天ぷらでしか食べたことがない)

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