【B】姫と王子の秘密な関係


兄さんもまた、会長の好意によって
繋げられたカップル。


「兄さんは桜吏嬢のことをどう思ってるんですか?」 

ふいに言葉が零れる。


「最初は戸惑ったよ。
 だけど今、僕はフィアンセが桜吏さんで良かったと思ってる。
 そんな風に思わせてくれる女性なんだ」

「そうですか……」



当たり障りのないように会話を繋げるも、
脳裏に浮かぶのは、あのイベントの日に出逢った
彼女の顔。


「晃介、どうしたの?」

「何でもないですよ。
 
 少し気になっただけで、
 それより桜吏嬢をお待たせしたら大変ですよ。

 いってらっしゃい」

「晃介は?」

「会長の好意」


嫌味の様に小さく呟くとその意味がわかる、
兄は顔を曇らせた。


「晃介、嫌なんだったら断ってもいんだよ。
 晃介が言えないなら僕が?」

「あぁ、気遣いは無用ですよ。

 早谷の人間になった運命【さだめ】だと思ってますから。

 何もかも自由を持ってた、俺が知ってる晃介は
 両親が亡くなった時に一緒に死にました」



閉ざすように、言い聞かせるように告げると
そのままハイヤーに乗り込んで俺はホテルへと向かった。


ホテルへ向かう車内、思い起こすのは、
今まで出会った女性たちの中で少し毛色の違った、
瑠花をしていた乙羽と言う少女。


コスプレは解放される時間。


だけどあまりにも、リアルからかけ離れすぎて
現実に帰った時に、離人感が半端ない。

だけど彼女とあったその日は、
何時もよりも早く現実に馴染むことが出来た。



この息苦しい生活に、
切り替えることが出来た。



だからだろうか……。



何時もとは違う自分を見せたくれた要因を探るに
彼女以外は思いつかなかった。





次のイベントで、
また会えるだろうか?



携帯電話のスケジュール帳を確認しながら、
今週末に、久しぶりのイベントが入ってることを確認する。




行けるか、行けないかは
当日になるまでわからない。



それでも、もし出かけることが出来たら、
そして彼女と出逢うことが出来たら、
その時は連絡先交換もいいのかも知れない。






何時しか……俺は彼女と出逢ったことで、
俺自身のタブーを犯そうとしてる自分に驚く。
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