【B】姫と王子の秘密な関係

「会長、少し華純さんと二人でお話ししたいのですが」

「あぁ、晃介。
 好きにしなさい。

 くれぐれも粗相などないように」



会長の言葉を聞くと、俺は会長に一礼して
華純さんの前で、ゆっくりと手を差し出す。



「どうぞ、あちらに席をご用意してあります」


華純さんは、戸惑いながらゆっくりと俺の手を取ると、
会長にお辞儀をして、ゆっくりと歩き出した。



「緊張しなくていいよ。

 君が緊張していたら、俺まで緊張しそうになる。
 それより……君、話したいことあるよね。
 
 これは俺の勘なんだけど、
 君はこのお見合いに乗り気じゃないんじゃないかと思って」



そう言うと、彼女は図星だと答えるように
体をピクリと震わせた。



「俺にとってはその方が好都合でね。

 だったらこうしよう。

 今日の感想を君は、君のお父上に伝えればいい。

 『早谷晃介は私の婚約者にはなり得ない存在でした』と。

 君が断る分には、君のステータスが崩れることはない」



突然切り出した俺の言葉に、
彼女は申し訳なさそうな表情を浮かべた。



「俺は大丈夫。

 実は俺にも思う人がいるから」




思う人……。
そんな風に口を滑らせてしまう俺が此処に居る。



「さっ、食事をしたら今日は帰ろう。
 家まで送り届けるよ」




そうやって告げると、少女から怯えた様子は消え失せて
まだぎこちないままに、笑みを見せる。




そのままディナーを食べ終えて、俺は彼女を屋敷まで送り届けると
いつもの様に帰宅した。




そして週末。


いつもの様に朝の食事会にのみ顔を出すと、
一ヶ月と少しぶりのイベントへと顔を出す。




イベント会場で再会した、
乙羽と言う少女は、今日は一人で姿を見せていた。





「こんにちは、乙羽さん」



姿を見かけて声をかける。







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