【B】姫と王子の秘密な関係



こういう時は……
乙羽ちゃんに久しぶりに会いたくなる。


そして今の自分とは違う、別の自分になることが出来た時
一瞬でも現実のストレスから解放されるから。


解き放たれるその時間に気持ちを立て直して、
もう一度、お父さんが身を置いた世界を歩き出したい。


クローゼットの中には、
今まで着てきた沢山のコスプレ衣装が丁寧に片付けられている。


その中から衣装を選ぶ前に、
乙羽ちゃんの名前を、ネットで打ち込む。


コスプレイヤー専用のSNS。


そこで乙羽ちゃんの部屋を確認すると、
次回のイベント参加予定と、
コスプレ予定のキャラクターの情報が連なっている。



明後日の日曜日、
イベント参加をする予定になってる乙羽ちゃん。

そのイベントの主催ページにとんで、
参加要項から当日のコスプレ参加も可能だと言うことを確認して
携帯に情報を閉じ込める。


そのまま、彼女の電話番号を表示して
ゆっくりとボタンを押した。




思えば……彼女に電話するのは、
今日が初めてかもしれない。



メロディコールが鳴り響くものの、
乙羽ちゃんが出る気配はない。



時間は20時半。




20時半?



その時間帯に俺の脳裏には、
もう一人の音羽ちゃんの存在が湧き上がってくる。




遠野オーナーのお嬢さんである音羽ちゃんと、
コスプレイヤーの乙羽ちゃんが同一人物?




まだ確証も何もないけど、
そう思うことが出来れば、俺が……遠野音羽が気になってしまった
現状にも説明がつくかもしれないと強引に納得させた。




乙羽ちゃんが、遠野音羽だとしたらこの時間は
お店に出てるはず。


音羽ちゃんの仕事が終わるのは、21時。


その頃にもう一度電話するか?

はたまた、SNSからメッセージを送ってみる?


彼女にメッセージを送るためだけに、
SNSにアキラの名前で登録して、
メッセージボタンから、彼女に連絡する。






乙羽ちゃん



こんばんは、アキラです。

日曜日、俺も仕事の調整がついたので
イベント参加します。

そのお知らせに、初めて電話してみましたが
電話には出なかったから、こっちから連絡します。

警戒されちゃったかな? 


乙羽ちゃんは、Tranceコスみたいだけど
あと一回、約束コスで合わせ出来ませんか?

乙羽ちゃんにあわせて、
俺も次回はTranceコス制作しておきます。 



もし可能なら、夜にでも電話お待ちしています。



アキラ


< 49 / 129 >

この作品をシェア

pagetop