【B】姫と王子の秘密な関係

9.描ききれない未来 -音羽-


大学一年。

四大に通ってる私だから将来を決めるのには、
まだもう少し時間があるって
そんな風に気楽に思ってた。

大学生の最初の二年間で自分がやりたいことを探して、
後半の二年間は、その将来設計の為に必死になろうって
そんな風に思いながら、今も見つからない将来の不安から逃避してた。


だけどそんな時間が、
現実の不安となって襲い掛かってきた
事務所で見た『複数店経営』の文字。



その文字が私を縛っていく。


二号店を持つことがお父さんの夢なのだとしたら、
娘としてそれは叶えてあげたいと思う。



だけど……私自身の未来が、
将来の絵図が描き切れない今の状態で、
軽はずみに決断出来るはずのものじゃないことも
私なりに知ってるつもり。



脱サラで、コンビニ経営者になったオーナーの娘。



だからこそ、このお店のことも
私なりに考えていかないといけないとは思うけど
そのレールしか将来絵図がないだなんて思いたくもない。



高校生・大学生と家業だからと、流されるように店を手伝い始めた。


だけどあくまで……お小遣いを増やしたり、
イベントに参加するための費用が稼ぎたくて始めただけど
コンビニ経営者としての勉強の為に日々を過ごしているわけじゃない。





矛盾してる……。





お店のことを考えたいと望みながらも、
お店に縛られることを望まない私自身。




だからといって、私が何をしたいと思ってるのかなんて
自分の心が見えない。



向き合おうと焦れば焦るほど、
出口の見えない迷路にはまっていく私は
精神的にも追い詰められていく。



出口の見えない迷路にはまったまま、
私は何時もの、当たり前の毎日を今日も続ける。


手帳に記入されたように、
大学の後は、和羽と合流してシフトへと入った。


事務所に入った途端、来ていたらしい営業さんこと小川が
私の顔を見た途端に一枚の紙を差し出した。
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