【B】姫と王子の秘密な関係


「私には私のビジョンがあります。

 故に、即答は出来かねますので改めて
 返答させて頂きます」



イラっとした勢いのまま、口早に告げて
私は事務所を飛び出すように後にして勤務に入った。



仕事中も集中力が追いつかない。



経営者の子供だったら、
絶対に家業をつかないといけないの?



継ぐことが強要されるの?
自由はないの?




そんな世界だったら、今更言っても仕方ないけど
脱サラしないで、お父さんにはずっと会社勤めしててほしかった。


そんな風にすら思ってしまう自分自身に、
イライラが抑えきれない。



その日の仕事は、カウンターフードの聞き間違えやら、
何時もなら顔を見たらその人の煙草の銘柄を出せるのに
記憶がリンクしてくれなくて散々な状態で、お客様にも怒鳴られながら
その日の勤務を何とか終えた。


制服を脱いで和羽を見送って二階の自室に戻る。
制服をハンガーにかけて、ふと机に視線を向けると
携帯が着信を告げるように点滅していた。





着信が一件ありました。






モニターに表示されているメッセージを確認して、
ボタンを操作して、着信相手を調べる。



[× From アキラ]


着信相手の名前に、驚きが隠せない。

そのまま発信ボタンを押したくなる気持ちを押し殺して
画面を戻すと、今度は【メール受信】のマークを確認して
再びボタン操作する。






乙羽ちゃん



こんばんは、アキラです。

日曜日、俺も仕事の調整がついたので
イベント参加します。

そのお知らせに、初めて電話してみましたが
電話には出なかったから、こっちから連絡します。

警戒されちゃったかな? 


乙羽ちゃんは、Tranceコスみたいだけど
あと一回、約束コスで合わせ出来ませんか?


次回は乙羽ちゃんにあわせて、
俺も次回はTranceコス制作しておきます。 



もし可能なら、夜にでも電話お待ちしています。



アキラ






コスプレSNS経由の
メッセージ受信のお知らせだった。



私が電話に出れなかったから、アキラさん
SNSで探してメッセージをくれたんだって思ったら
凄く心がドキドキした。


アキラさんも私に合わせて、
Tranceコスしてくれるなんて……。





震える指先で、そのままSNSの自分のサイトにログインして
そのまま返信ボタンで、アキラさんに返信をする。



今までは何度検索しても、
このSNSでアキラさんを見つけることは出来なかった。


だから今、こうやってアキラさんがこのSNS内に生息してるのは、
私にメッセージを送るために登録してくれたのだと思えた。

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