【B】姫と王子の秘密な関係



「晃介、僕には生まれた時から早谷しかなかった。

 晃介の場合は、高崎も早谷も存在して
 早谷と言う家柄は特殊すぎて、その重圧に潰されそうになることもあると思うんだ。

 僕だって昔、その重圧から逃げ出したくて必死にあがいて、もがいてた時期があった。

 だけどその時、勇希が何時も僕の傍に居てくれた。

 裕先輩・裕真先輩・天李先輩・大夢先輩、
 それに光輝兄さん・竣佑兄さん・高臣先輩・一綺先輩・将臣。

 一人じゃないって、ずっと教えてくれた。

 兄さんや先輩たちは、早谷の人間だから僕を受け入れてくれたわけじゃない。
 僕が僕だから、その手を差し伸べてくれた。

 だから……晃介にとって、僕自身がそんな存在になれたらと今は思ってる。
 君は昔の僕自身だから。

 今の君がやりたいことを、僕はとめることなんてしない。
 
 逆に言えば、どんなネットワークを酷使しても、君の辿った痕跡を消して
 隠し通してあげる。

 だから……君に残された春までの半年に満たない時間だけど
 自由にしたらいい。

 その中で、本当の晃介自身を探し出してほしい」



突然兄さんから告げられた言葉は、
今までずっとわだかまり続けてた闇を少し切り裂いてくれたようにも思えた。



「ほらっ、行っておいで。
 後のことは任せるといいから。
 
 僕たちは晃介の味方だよ。
 それだけは、忘れないで」



俺を支えるように立ち上がらせた兄さんは、
痺れを切らして姿を再び見せた、勇希さんへと俺を託すように背中を押した。


「勇希、後は頼んだ」

「わかってる。
 必ず、お姫様の元に連れてってやるよ」


そう言って押し込まれるように乗せられたのは、
勇希さんの愛車。


「高速ぶっとばするから、
 しっかり持ってろよ」


当初は意味不明な言葉だと思ったものの、
その理由はすぐにわかった。

一般道から高速に上がった途端、
スポーツカーだからか、馬力があるからか
俺が乗った車はグングンと速度があがり、
勇希さんは車の合間を縫う様にすり抜けながら加速していく。


ある意味……心臓に悪い。



「お前さ、ちょっとは体の力抜けや。

 抵抗するのも必要な時は必要だけどよ、
 人間、生きてく為にゃ力抜くことも必要なんだよ。

 手を抜いたからって諦めるってのとはわけが違う。

 まっ、お前が昔のアイツと違うのは、
 お前には、今自分で息抜きできる場所があるってことだ。

 そんな場所をお前自身で見つけ出すことが出来てる。
 そんだけで、お前はアイツよりは優秀だよ」



勇希さんの口から何度も何度も出てくる、
アイツが指すのは、由毅兄さんだと推測できる。

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