スタートライン~私と先生と彼~【完結】

高校生活



約400人いる新入生が集まる体育館は、4月の上旬だとまだまだ冷える。

体育館では、入学式が始まった。

これからの高校生活に期待に胸を膨らませて・・・といった余裕は今の私にはない。


私は寒さの震えとは違う震えに襲われていた。


「新入生代表挨拶。新入生代表、1年1組原田 沙知」


「はい!」


あぁ、なんで大勢の前で挨拶なんてしないといけないんよ・・・。

大勢の前で話すなんて一番苦手にしていること。


舞台の上まで行くのに、つまずいてこけたりしないかが不安で、おそらくぎこちない歩き方になっていただろう。

もう、そんなことは気にしてられない。

とにかく早く終えたい。


「・・・・今の気持ちを忘れないように、高校生活を過ごしたいと思います。・・・・新入生代表1年1組、原田 沙知」


やっと終わった・・・。

そんなに早口にもならず、噛みもせずに読めたと思う。

新入生代表挨拶は終わってみれば、なんとなく清々しい気分に感じることができた。

でも、気を抜いて階段から転げ落ちることがないように、慎重に足を進めた。


席に戻ると、「挨拶よかったよ」隣から声をかけてきたのは、入学式の直前に体育館の外で声を掛けてくれた橋本 奈緒だった。

そのあとも、声を潜ませて、入学式の最中話し続けていた。

「私、橋本奈緒。奈緒って呼んでね」

と優しい笑顔を向けてくれた彼女につられて自然と笑顔になった。

「私は・・・」

自分の名前を言おうとしたが、

「ハラダ サチちゃんでしょ?さっき、聞いたよ」

と先程仕入れた情報を披露してくれた。

「じゃぁ、沙知ってよんでね」

と友達としての一歩を歩み始めた。




友達もそれなりにできて、楽しい高校生活が過ごすことができそう。私は新しい生活のスタートラインに立った。



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