スタートライン~私と先生と彼~【完結】
「なぁ原田、お前さ卒業式の時、何て言おうとしてた?」
いきなり核心に迫られた。
さすがに、これには動揺を隠すことはできなかった。
「あ、あれは・・・」
「いや、やっぱり俺が言うよ」
私の言葉を遮るように先生が話し出した。
「俺さ、初めて見た時から、ずっと原田の事が気になっていた。
いつの間にか、お前の事を目で追うようになっていて、好きなんやと気付いた。
でも、教師と生徒の関係は壊すわけにはいかず、気持ちを伝えずにいたんや」
先生の視線が突き刺さって痛いくらい。
私は先生の目を見ることができなかった。
「そしたら、卒業式にお前が何かを言いたそうにしていた。俺には、告白するように思えたんやけど・・・・・・違うか?」
少し間があり、私が先生の目を見た瞬間、『違うか?』と聞かれ、「その通りです」としか答えることができなかった。
ごまかす必要もない思った。
やっぱり同じ気持ちやったんやね。
「その時の俺は、その想いは『恋』ではなく『憧れ』だと考えようとした。
だから、突き放した。俺にとっても『恋』ではないと思うようにしていたんや」
隆の言っていた通りや・・・。
「でも、それは間違いやった。俺はこの4年間、お前の事を忘れることはできなかった。
目の前にお前が居なくなって初めて気付いた。
やっぱり、俺は原田の事が生徒としてではなく、一人の女性として好きなんやと・・・」
先生は一言一言、確かめるように今の気持ちを話してくれた。
何か私に問うのでもなく、4年間の気持ちを伝えてくれた。だから、私も正直に話そうと思った。
「先生、私が先生に初めて会ったのはいつだと思います?」
突然話し出した私に、先生は少し驚いた顔をした。
「学校じゃないのか?」
「先生は覚えていないと思いますが、先生が赴任してくる前に会ってるんですよ」
私は、あの時の先生の顔を思い出して、話し始めた。
私は先生と初めて会った時の事を話した。
当たり前だが、先生は全く覚えていなかった。
「・・・それで、私は先生に一目惚れしたんです。だから、先生がうちの学校に来た時はびっくりしたんですよ!」
そう、びっくりしたというもんじゃなかった。
「数学の勉強は残りの教科より頑張ったし、わかる問題を質問しに行ったりしていたんです」
「そっか、やっぱりあれはわざとやったんやな」
そう言う先生は笑顔だった。
気付いてたんやね・・・。
「それやのに・・・せっかく勇気出して卒業式に告白しようとしたのに、言わせてもらえなかった。
無理に言って先生を困らせたくなかったし・・・」
「ごめんな・・・俺が悪かった」
先生は申し訳なさそうな顔をして言ってくれた。
「先生は悪くないです」
「ありがとう」
先生のこんな表情を見たのは初めてだった。
いや、初めてじゃない。
卒業式の日の・・・・・・最後に見た先生の表情と同じだ。
あの時は、目も合わせてくれなかったけど、今日は真正面にいるから表情が全て見ることができる。
「原田・・・もしよければ、俺と付き合ってもらえないかな?」
私はその言葉に静かに目を閉じた。