スタートライン~私と先生と彼~【完結】


日中は、4月とは思えないくらい暑かったが、やはり夕方となればまだまだ肌寒い。

でも、今の私にはこれくらいの気温がちょうどよかった。


「どうぞ」

と言われ乗った車は、私が学生時代に乗っていたのと同じ黒のエコカー。


「原田が学生の時に車に乗せたらそれだけで噂になるけどさ、今なら何も言われないなんて、不思議だよな」


助手席に座る私に笑いながら話す先生は、やっぱり変わっていなくて、私の懐かしい記憶がよみがえる。


「そうですね」


確かににその通りだ。

私たちの歳の差は変わらないけど、確実に時は流れている。

世間からも何も批判はされない関係になっている。

『先生と生徒』から『同僚』へ。

先生はおしゃれなイタリアンレストランへ連れていってくれた。


・・・彼女とかと来るんかな?そんな考えがすぐに浮かんだ。


「ここさ、友達の兄さんが働いてて、よく来るんやけど、うまいで!」


「へ〜彼女と来るんですか?」


学校を出る時では考えられないくらい自然に会話ができていた。

でも、なんでこんなことを聞いたのか自分でもわからなかった。


「もしかして、詮索?俺、彼女いてないし」


瞬殺されそうな笑顔に思わず目を逸らしてしまった。


「そうなんですか」


一瞬にして妙な空気が流れる。


先生には恋人がいないらしい。

その情報が私の耳に入った。

確かに入ったが、ただそれだけ。

嬉しいという感情はでてくることはなかった。

きっと、私の心情が言葉にも現れていたのだろう。

先生の表情に少し影が落ちているようだった。


この空気を打破したのは先生だった。


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