スタートライン~私と先生と彼~【完結】
さっちゃんの用意ができてすぐに俺らは出発した。
そして、2時間半の電車の中、俺らはほとんど寝ていた。
実家に帰るとリビングで出迎えてくれたのは、妹の涼だった。
「お兄ちゃんおかえり」
ソファーに座り雑誌を読みながら、目も合わせずに言う涼に呆れていた。
久しぶりに帰って来たというのに冷めた奴だ。
「ただいま。母さんは?」
「買い物へ行ってるよ。お兄ちゃんが帰ってくるから、張り切ってるよ」
『張り切ってるよ』と言う、お前のテンションの低さ、どうにかならんか?
「そう」
俺は、涼と同じテンションで答えたが、涼は急に笑みを零しながら聞いて来た。
「お兄ちゃん、彼女できた?」
「はぁ?」
こいつは相変わらずやな・・・。
こういう話になると、やたらと元気になる。
ニヤニヤと聞いてくる涼に、無意識のうちに顔をしかめていたらしい。
「その顔だといないんやね」
「うるさい」
俺は、もうこの話題は終わりと言わんばかりに、切り捨てるように言い、自分の部屋に行こうとしたが、涼はとんでもないことを聞いて来たので足を止めてしまった。
「原田先輩とは付き合わないの?」
「・・・・・・お前なんで・・・それを?」
俺はかなり動揺していた。
「前にお兄ちゃんに告白した子いるでしょ?あの子が言ってたよ」
どこで何を言われるかわからない。
「・・・・・・」
「好きなんでしょ?」
「うるさい」
涼は俺の表情を見るのが上手い。
だから厄介なんだ。
結局、否定もしていないので、涼は肯定したと判断しているのだろう。
どうせ、否定したって見抜かれるんだから。
墓穴を掘らないうちに話を終えるのが一番ダメージが少なくて済む。