スタートライン~私と先生と彼~【完結】

先生 決める

原田が卒業してから、もう4回卒業生を見送った。

どの卒業式でも寂しさはあったが、あれほど辛かった卒業式はない。


今でも俺は彼女を忘れられない。

原田が卒業してから、何人かの女性と付き合ったが、正直本気で付き合った人はいない。


いつもどこかで原田のことを想っていた。


あの笑顔

頭を撫でた時の恥ずかしそうな顔

寂しそうな顔

最後の無理をして作った笑顔

やっぱり、忘れられない。



俺の心を癒してくれた彼女にもう会えないのだろうか?



大学に顔を出したら会えるかもしれない。


でも、そんな時間はない。


長期休暇の時期になったら、ひょっこり学校に遊びにくるんじゃないかと思い、期待したり。


でもこの4年間、会えなかった。

一度、同窓会があったが、原田は姿を現さなかった。

もしかして、避けられているのではないかと思ったが、それでも忘れることはできなかった。


しかしある日、俺にチャンスがやってきた。

卒業式も終わり、全員の進路が決まった頃。

川田先生からあることを告げられた。



「斎藤先生、原田沙知って覚えてるか?」

忘れるどころか、忘れたくても忘れられないんだ。


「ええ、京府大へ行きましたよね?」

「そう、彼女が教員採用試験に合格して、4月からうちに来るらしい」


えっ?

これは夢か?

現実か?


「そ、そうなんですか?」


俺は信じられなかった。

こんな偶然があるなんて。

きっとこれは運命なんだ。

神様が俺にチャンスをくれたんだ。


俺はその日のうちに、付き合っていた彼女と別れた。

原田に気持ちを伝えるんだ。



今なら教師と生徒ではない。


何も気にすることなんてない。
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