メトロノーム

それからあなたは度々やってきた。他にもバーテンは何人もいるのに、いつも私の前に席をとった。



「付き合ってよ」

「またまた。いつもそうやって女の子口説いてるんでしょう」

「砂輪ちゃんだけだよ、口説くの」


下心が見えなかった。

それは彼が本気で私を好きだというのとも違う。

目当てが体なら、まだわかりやすくていい。だけどそうでないなら、私でなくてもいいはずだ。なのに、どうして。


あなたに会う度、私はあなたが気になった。

恋愛感情とは異なる、例えば近所の尻尾の短い野良猫が気にかかるような、そんな。

孤独感が連鎖する。

あなたといると心に穴があいて、あなたが帰るとかえってその空虚感が恋しくなる。

なんなんだろう。
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