メトロノーム

* * *


仕事を辞めて二ヶ月経つか経たないかのうちに、彼は新しい仕事を始めた。

何をやっているかは訊けなかった。だって、やりたくない仕事をやっているということが見えてしまったから。


あなたは電話を終えると、疲れた表情で煙草を取り出した。

さっきまでの、人懐っこい仕事の顔とはうってかわる。


「敦宏」


名前を呼びたい。

強く、あなたが欲しい。


「…ちょっと黙ってて」


私は歪んでいるのかもしれない。

あなたが乱暴でぶっきらぼうにいればいる程、愛しくなってしまう。

私に冷たくすればいい。


こっちがホンモノのあなたに近いんでしょ。

社交的で人当たりが良くて明るいあなたは、ツクリモノなんでしょ。
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