メトロノーム
これを口にしたら、もう会えないんじゃないか。そんな不安もあった。
ばくばくと暴れる心臓。
「……え、な、なに」
大きな左手が、助手席の私の右手を握った。
相変わらずの冷たい手。
「さわりたくなった」
はぐらかしたんだろうな。
わかっているのに、責めようとは思わない。
せめてもと、ぎゅっと手を握る。しかし、小さな私の手ではあなたの手を掴みきれない。
びゅんびゅんと過ぎてゆく景色。
夕暮れて光り始めたライトが、にじんでしまいそう。
つんと痛む胸が、あなたに届くことはないのだと。
高速を降りてしばらく走ると、ちかちか点滅する看板が目に入った。
インターを通るときにすでに離されていた左手は、またせわしなくハンドルを叩いている。