たゆたえども沈まず

私の開けた窓のサッシに手をかけて、軽々と中に入ってくる。

「今日服装頭髪検査あるから」

窓が閉められる。夏休み明けの気温は、身体に優しくない。

まだジメジメとした空気。
久喜は長袖を折っていて、ネクタイが緩いといつも注意されていた。

「あるから?」

久喜の一世一代に関わる事件が読み取れない。

検査が土いじりと何か関係が?

「ピアス見つかったら取り上げられるだろ。その前に土の中に隠しておいた」

「す、すごい」

だろだろ、と得意そうに笑う。

教室に行くまでに何人か知り合いと擦れ違い、久喜が挨拶をする。



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