たゆたえども沈まず

目は合ったけれど、話すことはなかった。

お互いに"違う"存在だって分かっていたからだと思う。
少なくとも、私はそう思っていた。

「習い事?」

夜道を歩いていて、後ろから急に尋ねられたので驚いた。

「……うん」

脇にバスケットボールを抱えた久喜の姿があった。

「わかった、ピアノ!」

「塾」

「だと思ってたよ」

「なにそれ」

ふふ、と笑ってしまう。初めて話したわけじゃないんだけど、少し緊張した。

「艶野くんは遅くまで遊んでるね?」

「ん。帰っても一人だし、夕飯勝手に食べろって言われてるから」



< 98 / 163 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop