たゆたえども沈まず
目は合ったけれど、話すことはなかった。
お互いに"違う"存在だって分かっていたからだと思う。
少なくとも、私はそう思っていた。
「習い事?」
夜道を歩いていて、後ろから急に尋ねられたので驚いた。
「……うん」
脇にバスケットボールを抱えた久喜の姿があった。
「わかった、ピアノ!」
「塾」
「だと思ってたよ」
「なにそれ」
ふふ、と笑ってしまう。初めて話したわけじゃないんだけど、少し緊張した。
「艶野くんは遅くまで遊んでるね?」
「ん。帰っても一人だし、夕飯勝手に食べろって言われてるから」