小児病棟
子供たちはみな、周りをキョロキョロした。すると一人の女の子が

「どんなミニカーですか?」

と婦長にたずねる。婦長は正哉のほうを見て

「加藤君、どんなの?」

と聞いた。正哉は椅子をズズっと引いてのそっと立ち上がり

「……えっと……銀色のやつです……」

と、小さい声で言う。全員にこのような手間をとらせ、正哉は少しいたたまれない気持ちだった。

正哉が椅子にかけると再び婦長がみんなのほうを見た。

「どうかしら? 心当たりのある人、いるかな?」

そうたずねる婦長さん。

「……見てないなあ……」

しかし、あちこちのテーブルでみな、口々に言う。そんな状況をしばらく静観していた婦長は

「じゃあみんな……ちょっと目をつぶってくれるかしら?」

と言った。子供たちは、言われるまま目をつぶった。正哉も悟も、目を閉じた。婦長は、全員が目をつぶったことを確認すると、ちょっとだけ鼻から息を吐き、話し始めた。
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