小児病棟
四人が持ってきたのは、歯磨き粉だった。おやつもなく、買い食いも出来ない彼らは、ひもじくなるとたまに歯磨き粉を舐めておやつがわりにしていたのだった。

「お! 裕二は定番のミント味か」
 
悟が、並んだ練り歯磨きを吟味し始めた。

「みんな違う種類が集まったな。よし! 利き歯磨き大会やろう」
 
正哉が提案した。

「利き歯磨き? なにそれ?」
 
慶一がきょとんとした顔でたずねた。
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