呉服屋の若旦那に恋しました
「好きになったりしんかったん?」
「ぶ」
「幼馴染のお兄さんとか、初恋の相手の代表じゃん」
「まあ、小さい頃はね……」
「やっぱり好きやったんや。今もちょっとときめくやろ?」
「まさか……。だって8つも違うんだよ?」
「そう? 20代になれば別に普通やない?」
「……なんでちょっと応援してるの」
「いや、ごめん、俺幼馴染とかいいひんかったからつい盛り上がっちゃってさ。はは」
そう言って、彼は笑った。
あっという間に時間は過ぎて、私の家へとたどり着いた。
彼は、いつも通り私を家まで送ってくれた。
いつもなら、ここで普通にさよならをするんだけど、その日は、少し私がすねてると思ったのか、帰り際にキスをされた。
薄暗い道で、触れるような優しいキス。
ほんの数秒だったけど、私は高校生ながらに彼に愛されていると感じていた。
「ほな、また明日」
「うん、ありがと」
彼の背中を数秒見つめた後、私は家に入ろうとした。
振り返った瞬間、私はかなりドキッとした。……そこには志貴がいたからだ。
「うわびっくりした! なんでいんのっ」
「今隆史さんと仕事の話してたんや」
「え」
「人をおばけみたいに言うな」
ビシッとでこぴんをされた。
ちなみに、志貴と会うのはこの時で約1カ月ぶりだった。
志貴は浅葱屋を継ぐと決めてからますますきりっとした顔立ちになり、“大人の男性”に近づいて行った。
私はよくこんな人に結婚してくださいなんて言えたな、とつくづく思った。釣り合うわけが無いのに。
……なんて思っていたが、私は1つ重大なことに気が付いた。