呉服屋の若旦那に恋しました


え、待って。

さっきのキス、見られてないよね……?


「し、志貴いつからいたの……?」

「いや、別にお前らがキスしてるから家からでれねーじゃんとか思ってねーよ」

「見てるじゃん!!!」


最悪だ。

最悪だ、最悪だ、最悪だ。

志貴の言葉に、私は一気に顔を赤くした。

志貴にキスしてる所を見られた。恥ずかしくて顔から火が出そうだった。

そんな私を見て、志貴は呆れたように笑った。


「あんな子供のキス見てもなんとも思わねーから安心しろ」

「……」

「今回はまともそうな彼氏で何より」


“子供のキス”。

志貴の言葉が、妙に胸に刺さった。

志貴との間に、分厚い壁を感じた。


ほら、やっぱり志貴は、大人なんだって。

やっぱり8つ差は、大きいんだって。


「……でも寂しいでしょ、あんなに志貴と結婚するって言ってた私が彼氏作っちゃうと」


自分の動揺を隠すように、私はおどけてみせた。

ひじで志貴をつっつくと、志貴は思い切りうっとうしそうな顔をした。


でも、そのあと、

「まあ、そうだな」

と、呟いた。

予想外の言葉に、私は一瞬かたまってしまった。

志貴は、ぽんと私の頭を撫でてから門を出て、私に背を向けた。

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