呉服屋の若旦那に恋しました
「………機嫌、良くしてくれるんじゃないの?」
突然私が話したことに志貴は少し驚いた様子を見せた。
だけど、すぐに私の頬を撫でて、
「衣都が望む通りにする」
と、言った。
そんなことをなんの恥ずかしげもなく言ってしまうあたり、自惚れてると言われるかもしれないけど、この男に溺愛されていると感じてしまう。
なんだか余裕を失って、不機嫌になっていた自分がおかしくて、私は笑った。
そんな私を見て、心底安堵したように、志貴が私にキスをしようと、距離を縮めた。
私は、その至近距離で頬を両手で挟み、彼の行動を制した。そして、嫌味ったらしくこうこぼした。
「……梨乃さん私と違って巨乳だったね」
「……なぜ今このタイミングでそれを言う」
「なんかちょっと志貴をいじめないと気が済まなくなってきた」
「……分かった後でどれだけ責めてもいいからとりあえず今はチューしたいんだけどどう」
「私はとくにしたくないから我慢して」
「待って普通に傷ついた泣きそう」
旦那とキスしたくない時とかあんの……?
そう言って、志貴は面白いくらいに落ち込んだ。
これくらいいじめたって罰は当たらないはず。
そう思って言ったことだったけど、想像以上に志貴が落ち込んでいたので、なんだかちょっと可哀想になってきて、志貴の髪を撫でた。