殺戮都市
外が静かになった。


戦線が街中へと移動したのだろう。


もうこのビジネスホテルの前を通る人も殆どいなくて、俺と理沙だけがここにいる。


敵同士……だけど、流石に恋人を殺す事なんて出来ずに、壁にもたれて俺達は床に腰を下ろして話をしていた。


「で、いつこの街に来たんだよ……俺がこの街に来た後か?」


「それは分からないけど……テストの初日かな。変なURLが送られてきてさ、ゲームみたいだから登録したんだけど……」


そうか、テストの初日なら、俺よりも早くにこの街に来てたんだな……って、テストの初日!?


「ちょっと待て……俺、テストの最終日に来たけど、お前いたよな?」


「し、知らないよ……その時私、この街にいたもん」


だったらあれは誰なんだよ。


何かおかしいと思ったんだよな……一緒に勉強しててもいつもと雰囲気が違って、普段なら絶対に断られるのに、ちょっと誘ったらあっさりやらせてくれたし。


今、隣にいるのが理沙だとしたら、俺は誰としたんだよ……。


この街にいる限り、答えなんて出ないんだろうな。


例え恵梨香さんでも、この疑問に対する答えは分からないだろう。
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