殺戮都市
「私はさ、何も大声出したくて出してるわけじゃないの。あんたが私のやる事にいちいち文句言うから、大声が出ちゃうんじゃない」


優の言う事を信じて、俺達は一旦近くのビルに入った。


大型商業施設の入り口が見える、小さなオフィスビル。


優に案内されなきゃ入り口も分からない、入り組んだ場所にあるビルだ。


そこの三階から、辛うじて見えているのだ。


「なかなか良い隠れ家だ。入り口が分かりにくくて逃げ道も一つじゃない。襲撃されてもどうとでも対処出来るな」


窓から外を眺めて、小さく何度も頷く恵梨香さんに、優の表情が明るくなる。


「でしょ?ここを見付けるまで大変だったんだから。まあ、一緒にいた仲間は……あんたらも見たでしょ?あいつらもいつか怪物になっちゃうのかな」


簡素な造りのソファにドカッと腰を下ろし、大股開きの優。


「お、おい、パンツが……見えてるぞ」


目のやり場に困る。


俺を男として見ていないのか、それともこの街ではそんな事すら気にする必要はないというのか。


「見せてるんだよ!あんた度胸ないんだし、別に見せたって何の心配もいらないもん」


まさかの第三の答えだった。
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