殺戮都市
「……キングを破壊しなくても良いのか?死神から、少年はそういう行動には出ないだろうって聞いてはいたけどよ」


本当は壊してしまいたい。


人でもないただの機械が、人である理沙を追い込んだのだから。


だけど……そんな事をしたって理沙は帰って来ない。


それに、キングを破壊してしまえば、亜美や優まで。


もう、悲しい想いはしたくないから。


「壊したら……皆死んでしまう。そんな事を望んでないし、そうならないように俺達はバベルの塔に行くんだ」


そう言って二人の前を通り過ぎて、俺は店内へと向かった。


「少年……」


俯いて、暗い表情の俺を見て、恵梨香さんはそれ以上の言葉を掛けなかった。


デパートの店内。


照明が点いているけれど、一部だけ暗くなっている部分。


中央にあるホールへとその足を向ける。


空気が重い。


自分で歩いているような気がしない。


少し高いところから自分を見下ろしているような、そんなふわふわした感覚に包まれて。


俺の心がそれを見るのを拒否している。


死んでいるなんて未だに信じられない。


それでも現実は非情なもので……ホールまでやって来た俺の目には、ベンチに横たわる理沙の姿が映っていたのだ。
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